記憶とカルシウム

イライラとカルシウムのトピックスでも紹介しましたが、カルシウムイオンは脳内で情報を伝達する重要な働きをしています。正確に調節された血液中のカルシウム濃度とその1万分の1の細胞内のカルシウム濃度の差が脳の記憶にも深くかかわっているのをご存知ですか?

脳細胞は、神経細胞とグリア細胞が複雑に連なる事で構成されています。脳細胞内には、正常な濃度に保たれたカルシウムイオンが存在し、神経細胞と神経細胞の間を飛び交う事で記憶されている情報を伝達しています。しかし、カルシウムが不足すると、脳細胞の中にカルシウムが流入して細胞内外のカルシウムイオン濃度のバランスが崩れます。すると、神経細胞からの情報がスムーズに伝達されず、せっかく記憶されている情報を上手に利用できなくなります。

脳の老化として有名なアルツハイマー病もカルシウムの濃度異常が関係していると考えられています。アルツハイマー病患者は、夕方から夜にかけて症状が悪くなる傾向があり、この時の血清カルシウム濃度は正常者より顕著に低下し、逆に細胞内のカルシウム濃度が上昇することが原因と考えられています。

このように全身的なカルシウム欠乏が、カルシウム調整ホルモンの分泌を介して細胞内のカルシウムの増加につながり、記憶その他の脳の機能や痴呆の発現にも影響を与えます。日本人は、60年以上も連続してカルシウムが不足しています。脳と神経の機能維持のためにも継続的に効率よくカルシウムや微量ミネラルを補給し、不足しないように心掛けて下さい。

参考文献:カルシウム‐その基礎・臨床・栄養、 (社)全国牛乳普及協会、西沢良記 他 編