カルシウムの吸収率に影響するものは?
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前回トピックス「カルシウムの吸収の仕組み」でお伝えしましたように、ヒトの生体は摂取したカルシウムの20~30%を小腸から吸収して血液内に輸送し、身体の必要な箇所に運んで利用します。そして、吸収されなかったカルシウムは便と一緒に排泄されてしまいます。今回は、このカルシウムの吸収率について考えていきましょう!
カルシウムの腸管における吸収率には、カルシウムの充足の状態や摂取した食物に含まれる栄養素が関与しています。
身体がカルシウムを要求している場合に腸管でのカルシウムの吸収は促進します。例えば、カルシウムの摂取が不足していたり、大量の汗とともにカルシウムが失われた場合等は、不足しているカルシウムや失われたカルシウムを補充するために身体がカルシウムの吸収率を促進して不足分を補おうとします。また、成長のためにカルシウムが必要な子どもや、胎児や乳児のためのカルシウムが必要な妊産婦もカルシウムの吸収率が促進することがわかっています。反対に、病気の場合や、精神的な不安やストレス、服薬や加齢によってカルシウムの吸収率は減少し、特に加齢に関しては、女性では45歳くらいから、男性では60歳くらいから減少が始まると言われています。
次に、カルシウムの吸収を促進するといわれている栄養素について考えてみましょう。最も重要な栄養素はビタミンDです。ビタミンDが不足すると、くる病や骨軟化症といったカルシウム欠乏が生じます。また、カルシウムと言えば「牛乳」を思い浮かべる人も多いかと思いますが、牛乳をはじめとする哺乳動物の乳に含まれている乳糖やたんぱく質消化物(カゼインホスホペプチド)はカルシウムの吸収を促進する働きがあります。
たんぱく質については、たんぱく質摂取と骨粗鬆症の発症率の調査が行なわれており、その結果から、十分なカルシウム摂取とたん白質摂取が骨粗鬆症の予防につながるとの調査結果が出ています。
ビタミンDとカルシウムの吸収の関係についてはすでにこのサイトのトピックスでお伝えしていますね。(カルシウムの吸収促進に日光浴) ビタミンDは鶏卵や鮭、いくら、干ししいたけなどに多く含まれています。また、日光に当たることで皮膚である程度合成されます。
カルシウムの吸収を抑制するといわれている栄養素にはリンやシュウ酸、フィチン酸、脂肪などがあります。リンは、間接的にカルシウムの吸収に影響すると考えられており、リンの摂り過ぎはカルシウムの吸収を阻害してしまいます。全粒粉小麦粉やふすまを用いたカルシウムの吸収に関する多くの研究報告があり、穀物中のフィチン酸はカルシウムの吸収を阻害するという結果が出ています。脂肪については、過剰に摂取すると吸収されなかった脂肪がカルシウムと結合して糞便中に排泄されてしまい、カルシウムの吸収率の低下につながります。
このように、カルシウムの充足状態や、摂取する栄養素によって、カルシウムの吸収率は影響をうけますが、まずはカルシウムの十分な充足を心がけることが大切です。
日々の食事内容を見直したり、カルシウムを補給できる健康食品や飲料などを利用して、積極的にカルシウムを摂取しましょう!
参考文献:カルシウム‐その基礎・臨床・栄養 (社)全国牛乳普及協会、江澤郁子他 編