カルシウムの吸収の仕組み
カルシウムイオン.comのサイトをご訪問いただき、ありがとうございます。この度、サイトをリニューアルいたしました。「新しくわかりやすく」情報をお届けできればと考えております。
さて、本サイトのトピックスにも何度か取り上げてお伝えしていますように、カルシウムの1日の平均摂取量は推奨量を満たしていません。平成28年の国民健康・栄養調査報告によると、20歳以上の男性のカルシウム摂取量の平均値が498mg/日、女性の平均値が492mg/日となっており、男女とも推奨量に対して25~30%以上不足しています。このように、カルシウムは摂取不足となっている栄養素であることを認識されてはいますが、すぐには身体への影響が現れないため、深刻に受け止められていないように思われます。
リニューアル後初のトピックスでは、カルシウムの吸収の仕組みを再確認して、摂取不足により、生体の中でどのようなことが起こっているのかを考えていきましょう。
ヒト(高等動物)の血清カルシウム濃度は厳格に約10mg/100mlに調節されています。これをカルシウムの恒常性と言いますが、この恒常性はどのように維持されているのでしょうか?
ヒトの生体は、摂取したカルシウムの20~30%程度を小腸から血液内に吸収し身体の必要な箇所に運んで利用しますが、小腸から吸収されたカルシウムがすべて利用されるわけではありません。小腸から吸収されたカルシウムの一部は,新しい骨を作る(骨形成)ためのカルシウムの入れ替わり(骨のリモデリング)に利用され,残りは尿中に排泄されます。また,消化管に分泌された消化液や胆汁中のカルシウムの一部も便中に失われます。最終的に食事から摂取したカルシウムの10~15%程度が体内に保持されることになります。食間には腸管からカルシウムの吸収が起こらないため、生体は骨を溶解して血清カルシウム濃度を10mg/100mlに保とうとします。骨はカルシウムの恒常性のために古い骨を壊して(骨吸収)カルシウムを血中に供給します。
摂取した食事から吸収されるカルシウム量が、血清カルシウム濃度を10mg/100mlに調節するのに十分な量であれば、骨吸収と骨形成は平衡状態を保てるので、骨のカルシウム量が減少することはありません。この平衡状態を保つためには、体重1kgあたり10mgのカルシウムが必要であることが算定されています。つまり、体重60kgであれば、600mgのカルシウムを食事から摂取すれば、骨のカルシウム量を減らすことなく、血清カルシウム濃度を10mg/100mlに保つことができると考えられます。
しかし、食事から十分なカルシウムが摂取されないと、血清カルシウム濃度を10mg/100mlに調節するために、骨吸収と骨形成のバランスが崩れて十分な骨形成が出来なくなり、骨のカルシウム量が減少していく、ということになります。
さらに、成長期の子どもは、カルシウムの恒常性を維持するのに必要な量だけでなく、骨の発育のためのカルシウム量が必要です。また、妊産婦は、胎児の発育や乳汁分泌等に要するカルシウムの摂取が必要となってくるのです。
カルシウムの摂取量が少ないと、体内では骨を少しずつ溶かして体の機能を正常に保とうとするので、カルシウム摂取不足による不調はすぐには現れません。しかし、徐々に骨のカルシウム量が減少し、何年も経ってカルシウム欠乏の症状に気付き、その時にはすでに骨粗鬆症が進んでしまっている、ということになってしまうのです。
体内に吸収されるカルシウムは食品によっても変わってきます。カルシウムを十分に摂取しているつもりでも、吸収率が低ければ、体内で利用できるカルシウム量も少なくなり、カルシウム不足となってしまいます。この吸収率については、改めてお伝えしたいと思っています。
普段から、積極的にカルシウムを摂取し、骨のカルシウム量を維持していくことが大切です。カルシウム豊富な食事の摂取を心がけましょう!
参考文献:カルシウム‐その基礎・臨床・栄養 (社)全国牛乳普及協会、西沢良記他 編