認知症とカルシウム
昨年、厚生労働省は、全国で認知症を患う人の数が2025年には700万人を超えるとの推計値を発表しています。現在、65歳以上の高齢者の約4人に1人が認知症の人又は予備軍と言われ、さらに増加することが見込まれています。
「認知症」にならないための絶対的な方法はありませんが、「どうすれば認知症になりにくいか」という研究は進んでいます。
そのひとつに「カルシウム摂取が認知症発症のリスクを低下する可能性がある」ことがわかってきました。今回は「認知症とカルシウム」の関係についてお伝えします。
知ってほしいカルシウムパラドックスでお伝えしていますが、人体には血中のカルシウムを一定に保つ仕組みがあります。カルシウム摂取量が不足すると、副甲状腺ホルモンが出て骨からカルシウムを取り出し血液中のカルシウム濃度を調整します。
しかし、慢性的にカルシウムが不足している状態が続くと、副甲状腺ホルモンを出す指令が頻繁に出て、骨からカルシウムが過剰に溶け出してしまいます。それに伴って、血液中のカルシウムが血管壁や脳、軟骨、免疫細胞などに入り込んでしまいます。
脳細胞の中にカルシウムが入り込むと、脳細胞の働きが悪くなり、記憶をつかさどる細胞が傷つけられ、認知症やアルツハイマー病を発症させる原因になるのです。
では、認知症発症の可能性を少しでも低くするにはどうしたらいいのでしょうか?
九州大学大学院医学研究院による「福岡県久山町の疫学調査」では、1985年から65歳以上の住民を対象に認知症に関する追跡調査を行っており、認知症発症と食事パターンの関係についても検証しています。
その結果、和食を中心とした食事と牛乳・乳製品の摂取が多いほどアルツハイマー型認知症の発症リスクを下げることがわかりました。
つまりカルシウム摂取量も関係していると言えます。
特に、血管性認知症では有意な低下が見られたそうです。
「国民健康・栄養調査」の平成26年の調査結果によると、この10年間カルシウム摂取量は全般的に減少しています。
認知症の原因にもなるカルシウムパラドックスを起さないように、継続してカルシウムを摂取するよう心がけましょう!!
参考:平石貴久「健康の新常識」(株式会社あき書房)
認知症ねっと:https://info.ninchisho.net/mci/k60
認知症のコホート研究「老年精神医学雑誌 第26巻増刊号」:http://www.wound-treatment.jp/new-data/2015-0403/1.pdf
食品化学新聞2016年4月14日:「健康日本21推進フォーラム 高齢栄養と疾病の関連」